2016.1.5 火曜日

日本のご当地発酵調味料「魚醤」を知っていますか?


日本を代表する調味料と言えば「醤油」。その原料はご存知「大豆」ですが、もとは魚を原料とする「魚醤」、大豆以外の穀物から穀醤、鴨や鹿等の干し肉から肉醤、ほかにも果物や野菜、海草等を原料にした草醤(くさびしお)がつくられ、食べられてきました。
残念ながら、保存性や生産性に優れた醤油が主流となり、他の醤類はすたれてしまいましたが、各地方には様々な魚介を原料とした「魚醤」がいまも愛され、近年になって新たに開発されたニューフェイスも登場し、味わう楽しみも増えています。
クセのないシャープな旨みが特徴の大豆醤油に対し、魚醤には独特の風味と深いコクがあります。一見「ライバル」のように見える両者ですが、実はこんぶと鰹節のようにお互いに違う個性を補い合うことで、より味わいに深みが増すという、良きパートナーといえるでしょう。
大豆さかな
大豆の醤油と魚醤はライバル?いいえ、互いを高め合うパートナーなんです!
ちなみに、大豆醤油はアミノ酸が豊富な一方で、魚醤はペプチドが豊富。似た両者ですが、性格は真反対。醤油がしっかり味を付けるのに対し、魚醤は味を和らげる傾向があります。ちょっと塩カドや生臭さなどが感じられる場合には、魚醤をちょっと加えるとやわらかな風味になります。鍋物などにちょっと加えたり、繊細な白身魚のお刺身につけたりするのもおすすめ。淡白な味わいを消さずに生臭さが消えて、上品な味わいになること請け合いです。
なべふぐさし
鍋物に使うと味をまとめる働きが!白身魚の繊細な旨みを引き立てる!
 
● 日本の魚醤の代表格「しょっつる」
日本で最も有名な魚醤といえば、秋田県・男鹿地方に伝わる「しょっつる」でしょう。かつてはこの地方の各家庭でつくられ、醤油よりも庶民には身近な存在だった「しょっつる」も時代の流れとともに少しずつ消えていきつつあります。しかし、昔ながらの味を再現したいと奮起する醸造所が増え、少しずつ再び生産量が増えているとか。「諸井醸造所」もその1つ。新鮮なハタハタと塩だけを原料とし、仕込み樽に入れて重しをし、時々櫂棒でかき混ぜつつ2年。自然発酵で蕩けた原液を漉すと琥珀色の「しょっつる」が完成します。
しょっつる
「諸井醸造所」秋田しょっつる
https://www.shottsuru.jp/
●濃厚な味わいの石川県「いしる」が生産量日本一!
北陸新幹線も開通し、にわかに注目を集める石川県からは、イワシやいかを原料にした「いしる」がエントリー。いわしのみ、いかのみ、メギスを加えるなど、製造所によって配合が変わるので食べ比べてみて好みの物を見つけましょう。色濃く旨みも濃く、やや塩分も多めなので慣れないうちは扱いが難しいかも?そこで、近年ではサバやカツオのだしで希釈したタイプも登場し、人気を集めているそう。
いしる
株式会社ヤマト醤油味噌
http://www.yamato-soysauce-miso.co.jp/ca_ishiru.html
● 日本三大魚醤の「いかなご」の魚醤
今を遡ること2000年、皇行天皇の王子・神櫛王に『いかなご醤油』を献上したという伝承もありながら、日本三大魚醤といわれつつも、長年絶えていた「いかなご魚醤」。その復活が地元・香川県で進んでいます。「日本料理 菊水」もその1つ。成長によって呼び名が変化する「いかなご」のなかでも脂がのりきった「こなご」を使用し、瀬戸内海の塩で仕込み、約1年かけて熟成させています。
いかなご醤油
日本料理 菊水「いかなご醤油」
http://www.wasyoku.net/shop/ikanago/ikanago.html
● ほかにもこんなにいろいろ!好みの味を見つけよう!
<福井県:鯛醤>
若狭湾で水揚げされる魚介を使った醤づくりが進んでいます。たとえば、小浜名物“小鯛ささ漬”で知られる老舗小浜海産物では、連子鯛をたっぷり使った「鯛醤」を開発。人気の一品となっています。通常、魚醤は内蔵も使うのが一般的ですが、あえて身だけを使うことで、上品な味わいに仕上げています。
鯛醤
小浜海産物株式会社「鯛醤」
http://www.wakasa-marukai.co.jp/
<大分県:鮎魚醤>
大分県日田市は鮎の養殖が盛んな地域。その鮎を丸ごと使った「鮎魚醤」は、通常の魚醤のような強い香りがほとんどなく、すっきりとした旨みと上品な味わいが特徴。様々な魚醤がある中でも珍しい逸品といえるでしょう。臭みを和らげる働きがあり、高級日本料理店からも引く手数多とか。「鮎魚醤」でワンランク上の和食を狙ってみては?
鮎魚醬
合名会社 まるはら
ww.soysauce.co.jp/commodity/ayugyosyo/ayugyosyo.html
<鹿児島県:飛魚の雫>
種子島の飛び魚を原料に発酵・熟成させて作った魚醤。飛魚と聞くと濃厚な味わいを想像しますが、意外にすっきり口当たりまろやか、一般的な魚醤に比べて塩分が三分の一と塩分控えめ。お刺身のつけ醤油におすすめとのこと。
トビウオの雫
有限会社みつわ蒲鉾「飛魚の雫」
http://mitsuwa-kamaboko.jimdo.com/
※数量限定につき、お問い合わせください。
<北海道:雲丹、鮭、ホッキ貝など>
海産物が豊かな北海道は、道をあげて魚醤開発に取り組んでいます。どれもこれもおいしそう!よりどりみどりの中から、お土産に購入して取り寄せするファンも続出しているそう。
北海道魚醬地図
北海道魚醤油生産組合
http://www.kitano-gyosyoyu.com/index.php
魚文化の国・日本を体感できる魚醤の数々。旅のお土産に求めたり、またはお取り寄せしたりして、いろいろ味わいを比べてみてはいかがでしょうか。
 
オルガナ編集部