2016.7.4 月曜日

【海外オーガニック事情】お客さんも家族もハッピーなビオ酪農~ バイエルン「ツム マルクス」の農場ライフ♪


生まれて5週間の仔牛たちがお迎えしてくれました。よちよちで本当にかわいいです。
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今、ヨーロッパの乳製品・野菜・果物のビオ事情は単純に「農薬を使わない」から、いかに「地産地消をしていくか」が農家の皆さんにとって大きなテーマになっているそうです。
今回、ビオの酪農農場【ツム・マルクス Zum Marx】を訪問して今のビオ酪農の生の声を伺う貴重な体験ができました。
南ドイツ・オーストリアチロル地方に近いドイツの酪農地帯にこの【ツム・マルクス Zum Marx】はあります。オーナーのゼップ(Zepp)さんは4代目の農家、娘さん夫婦と4人で家族経営にあたる典型的な酪農農家です。
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「ツム マルクス」酪農農場オーナー ゼップさん
ゼップさんは2013年からビオ酪農に転向。それまでは化学的な肥料や飼料での酪農を行っていましたが、奥さんがずっとビオ的生活を送りたかったこと、牛たちが原因不明の病気に襲われていたこと、お客さん達にありのままの本当の乳製品を提供したかったことが重なり、思い切ってビオ農業に転向されたそう。
大変大きな転換でしたが、今ではとてもハッピーです、と答えてくれました。
自分自身が正直に生きていること、お客さんの喜ぶ顔が直に見えること、牛が健康的に長生きになってくれたこと、家族の笑い顔が多くなったとのことでした。
こちらのチーズはほぼ100キロ圏内のマーケットでほとんどが売れきれてしまうそう。しかもこのビオの牛乳はほとんどがご近所の方々が買いに来る分で売り切れだそうです。
チーズ・ヨーグルト・クバルク(クリームチーズに近いヨーグルト)のみが外向けの商品として、ミュンヘンなどのビオショップに出荷されるのだそうです。
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こちらが施設内のショップ。花もキレイにあしらわれとてもきれいで素敵です。
牧草小屋・厩舎・チーズ・ヨーグルト作成室・販売小屋などがすべて同じ敷地内にあります。
作業がとても効率よくできるのは日本の酪農家さんにはうらやましい限りですね。
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ヨーグルト作業室と牧草貯蔵室、奥には木製チップの貯蔵庫が。
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こちらがヨーグルト作成室。ちょっと覗かせていただけました。とったばかりの牛乳は90℃まで加熱、その後40度でヨーグルト菌と熟成、一晩たてば出来上がり、無駄な工程はひとつもありません。
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この施設では、夏の間の天候の悪い時と暑すぎる時以外は、基本は放牧です。
この日、気温がかなり上昇したため、牛たちはみな屋根のある厩舎に避難、おいしそうに採れたてクローバー入りのフレッシュな牧草を食べていました。
ホルスタインではなく、まだら模様のフレック種(Freck Viieh)が40頭います。
ドイツではビオの認定には厳格なルールがあり、1ヘクタールに2頭までの牛しか飼えません。ゼップさんのお宅では40頭の乳牛に対し、42ヘクタールの広大な敷地で飼育をされていてかなり余裕があります。
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こちらは木チップ、近くの伐採木を利用してソーラーとチップ燃料で、施設内の全ての燃料を賄っています。ビオ農場で大事なのは保存用にきっちりと乾燥した牧草をつくること。湿気が牧草に移ってしまっては大変なのです。こちらでは灯油など化石燃料は使っていません。
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こちらは試食させていただいたカマンベールチーズとヨーグルト。お値段の安さも驚きですが、おいしさはまた格別です。視察ツアーの仲間たちはチーズ一片とヨーグルト2種をペロリといただいてしまいました。
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美味しい、美味しいを連発してしばらくすると、何やらゼップさんがそわそわし始めました。
どうしたの?と通訳の方が聞くと「明日は天気が崩れそうだから、今から牧草作業の追い込みをしなきゃいけなんだ」とのこと。えっだって、こんなに暑いくらいの快晴なのに・・・?
実は酪農の場合、農家の方は天気に関してかなり敏感です。というのは、天気予報は見ないのですが、風や雲行き、匂いなどでこれからの天気をいつも気にしているそうです。ゼップさんも天気の変わり目を感じて急いで農場に出かけていきました。
確かにその後雨になったのでゼップさんの天気予報はあたっていました。こういう感性こそビオの醍醐味なのですね。
今回の酪農農場訪問ではいわゆる地産地消とその大切さが身に染みました。
この地域に住んでいる人々は本当に人生が終わる近くまでこのゼップさんのフレッシュな乳製品を楽しみにしているかもしれない。
人も牛も環境も皆仲間感覚で食の恵みがもらえる、そんなビオスタイルがある地域がとてもうらやましく思えたのでした。
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Hofmolkerei Zum Marx
Hochibreitein1 82395 Obersockering
http://hofmolkerei-marx.de/
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こちらはゼップさんたちの暮らしている母屋。典型的南ドイツの大きな家で、どこもかしこもかわいくきれいなのです。
生き方、暮らし方の本質的な豊かさとはなにか・・・そんなことを実感したbio酪農農場でした。
つづく