2019.2.7 木曜日

茶の脇道 その二

茶道を通して知る様々な和の世界。着物、書道、香道、和菓子、茶道具などなどそんな顛末を備忘録的エッセイで綴っていきたいと思います。

 

茶道と一口にいっても、そこに攻略しなければいけない様々な関門がある。

 

その一つは着物。

 

正直、生涯、着物にそでを通したのは、幼少の頃のお正月に父の仕事のお得意様へ年始のご挨拶に伺う時、七五三、成人式の振袖、大学の卒業式に色無地と袴、以上。全く着物に興味がなかったので、いきなり選べ、着ろといわれてもgoogle mapのない荒野を進むような気分。

まずは全体像を把握して、どんな着物あり、どんなTPOがあるのかをつかむのが先決と、お茶のお稽古をお願いしている友人からレクチャーをうけた。

 

お茶事にあう着物!?

 

「お茶会だったら付け下げや地味目の訪問着でもいいですし、まぁ正式なお茶事でしたら色無地に少し金や銀がはいった帯が無難ですかね」

なんですか?付け下げ、訪問着、色無地って!?

おなじみの振袖を筆頭に、黒留、色留、喪服、さらに小紋や紬、木綿やウール、浴衣などなどなど。着物にはいろんな種類があるらしい。それらは正装から普段着までそれぞれに格付けのルールがある。

もちろん季節によって、10月から5月くらいまで着る袷(あわせ)や、5月の立夏のあたりから9月くらいまで着る単衣(ひとえ)など素材も仕立て方法も異なる。とくに単衣の季節は絽や紗、綸子、木綿、麻といった薄い素材に変わる。しかもその衣替えは、着物だけでなく帯の素材、半襟、帯揚げ、長じゅばんなども連動して変えていくのだ。

着物も帯も少し季節を先取りしたものを選ぶのが粋だといわれるそうだ。

そして、着物と帯の合わせ方には基本ルールがあるそうで、

「『織りには染め、染めには織り』という取り決めがあるんですよ~」

と友人がいう。なんじゃそりゃ?

織物(紬など)には染めの帯、染物(友禅や一般的な訪問着や色無地)には袋帯や丸帯などの織物の帯を使うことだそうだ。ただ、最近のコーディネートの提案では、基本はそうだけど、デザインであわせちゃってもいいのよ~という風潮もある。どちらがよいのかは、私にはよくわかりません。

よくわからないときには、ひとまず古典的なルールにのっとり、箪笥に眠っていた何枚かの着物の中から、おそらくお茶事用に買ったであろう覗色(水色)の正絹の色無地に銀糸のはいった袋帯を選んだ。しつけ糸を取りながら広げていたら、八掛(ひらりと前でめくれる部分)に加賀友禅で茶屋辻風景が書かれていてびっくり!見えないところに贅沢な加賀友禅の落款付き。

お母さん、一体いくらしたの、これ・・・。時はバブル。聞くのもこわい。

同じお茶事でも初釜近くだったり、テーマがあるときは案外、茶道具の邪魔にならないよう抑えめの色味の訪問着や付け下げでも華やかで楽しい。

 

ずぶずぶはまる沼のような着物の世界

着物を普段ちょっとしたお出かけに着ようと思ったら、当然シチュエーションにあったものがどんどんほしくなる。

しかも茶道具や茶菓子、茶花がそうであるように、着物も季節やいく場所や演目に関連した「意味をもつものでなくてはならない」(ならなくはないんだろうけど)のだ。

それは着物の文様で表現されたり、帯の柄で表現されたりと、奥が深い。

着物と帯だけでなく、そのバリエーションは半襟、帯揚げ、帯紐、履物、コート、バッグと続き、それに帯留めやらアクセサリーが加わればキリがない。

どこまで攻めればいいのか・・・。一体いくらかかるのか・・・。
でも、これは誰もが通る道だそうだが、なぜか無償にほしくなって、夜な夜なネット検索をしてしまうのが常だそうだ。(わたしだけじゃなくてよかった(汗))特に帯には中毒性があると私は思う。

 

さらに上等なものを求めれば、長襦袢の世界が後ろに控えている。
最初は母がつかっていた簡易ないわゆる「うそつき」といわれる二段式の襦袢でお茶を濁していたが、やっぱり1枚ものがほしくなる。しかも正絹で好きな色に染めた長襦袢を京都まで作りにいきたくなってしまう。

そしてさらに(ばかりで恐縮だが)肌着と補正下着の世界が待ち構えている。
肌着の素材はやはりさらしがよくって、日本古来の素材の良さを、優れた機能を今更ながらに感じてしまうのだ。

 

着物生活は案外エシカル

調べていくうちに、着物は仕立て直しもできるし、いい素材のものを購入し、きちんとした手入れをしておけば何代も持つ。
しかも着物という芸術品はリメイク素材としてもとっても優秀だということがわかってくる。

長襦袢にいたっては、最初薄い色で染めておいて、汚れてきたらさらに濃い色に染めれば何十年でも着られるらしい。

帯も古いものでも仕立て直すこともできるし、思い切って古い帯は「つくり帯」というすぐに帯として巻けてしまう簡単帯に変えてしまうとか、帯をひらいてバッグにしたりいろいろ加工が可能だ。

それもこれもやっぱり正絹だったり、いい織りだったり。
素材の上等なものは、結果、使い捨てではなく、いろんなものにリユースでき長く使えるものになる。

そして、着物は暖かい。
あんなフルオープンの裾からぴゅーぴゅー風がはいってきそうなうえに、絹だの綿だのだけって寒いよね?と着る前は思っていた。
が、暖かいと感じるのは、何枚も布を重ねてその間に暖かい空気の層があるからということに気が付く。
真冬なのに、あれ?なんだか暖かいよ?それもそのはず。普段重ねている布の枚数よりはるかに多い枚数を重ねているのだ。
そして、それは天然素材のほうが、絶対暖かいし、肌触りもいい。

素材の次には文様がある。
私は正倉院文様や有職文様だとか、吉祥文様など古典的な文様が好きだ。文様や織りを語りだすと一冊本がかけるくらいなので、この辺で。

でもちょっと更紗柄の着物に半幅帯なんかしめてみたいとひそかに狙っている。

(つづく)