今話題の奄美大島の伝統的発酵飲料「ミキ」作り
ミキの由来は神様に捧げるお神酒
「ミキ」をご存知ですか?「ミキ」は「お神酒」のルーツともいわれ、あの映画「君の名は」では巫女が噛む「口噛み酒」と呼び、異次元を繋ぐキーとして描かれていました。
実際、奄美や沖縄では神と人を繋ぐノロやヨタが行う神事や祭事で、神が降りる依り代として今もなお使われています。ミキは本来、その土地でとれた作物でつくり、その土地の土地神に捧げ、土地神の命が吹き込まれたものがお神酒となり、またその土地の人々の身体を潤し、栄養となるという循環の中にあるものです。
ミキは日本人の遺伝子に深く埋め込まれた命の食「お米」をおかゆにして、生のサツマイモをいれ、常在菌や乳酸菌で自然発酵させたもの。
甘酒やヨーグルトのような味で乳酸菌たっぷりのミキには「1ccに1億個、またはそれ以上の乳酸菌が生きている」(腸内細菌の研究者・辨野義美先生)といわれ、胃腸の働きを助け、体調不良のときにも消化に負担なく栄養がとれる、奄美の先人の知恵の賜物なのです。
ミキの伝道師 田町まさよさん
市販のミキとは違う、独自の自然派のレシピを調味料への応用とあわせ、「ミキ」の素晴らしさを広める活動をされているのはミキの伝道師「自然料理家 田町まさよさん」。
現代でもミキは奄美諸島では神事の肝。
米は神からの贈り物であるという思想から、それを依り代にその土地の神をおろすために使われているものなのです。そんなミキを作り続けているうちに、まさよさんには八百万の神々から指令が降りてきたそう。
ミキはスピリチャルな面だけではなく、乳酸菌のもつすごい作用で、腸内環境をよくし、アレルギーが改善したり様々な効能があり、現代医学でも腸内細菌は人のメンタルからガンやアレルギーなど様々な影響を持つことがわかってきています。その腸に作用するのがミキ。
私たちは知らず知らずのうちに、生活の便利さと引き換えに、体内にものすごい量の添加物や農薬といった毒を抱えてしまい、それが腸内でよく働く菌を抑えてしまっている。
そんな腸内環境が、不健康な国を、社会をつくっていくのだと。
だから日本の八百万の神々がミキで「元に戻せよ・・・」とおっしゃっているらしい。
腸内細菌から意識を変えて国を変えるってアプローチが、さすが神様たち、最先端!!
その伝道師に選ばれたまさよさんなのです。
【田町まさよさん】
自然料理家 / ガイド。1970年生まれ。
大阪外国語大学インドパキスタン語学科卒業後、96年に奄美大島に移住し、地元旅行会社勤務後、ガイドとして独立。移住後にかかった重度のアトピーを8年かけて自然に治した経験から“人が病気になるのは、自然とのつながりを忘れてしまったから”と気付き、奄美の自然と霊性の力を借りた心身再生のためのリトリートツアー、ガイド、人の心と体を自然に戻す力のある無肥料・無農薬の野菜・野草を使った料理教室や食事会、奄美の伝統発酵飲料“ミキ”を作りながら、自分の中の真実のお話をする‘ミキの会“などを全国各地で開催。
◎著書『奄美再生のレシピ』(海風社)
◎ブログ『かみさまの住む島 奄美』
http://plaza.rakuten.co.jp/loveamami/
東京のど真ん中の神様に捧げるミキをつくる
まさよさんのワークショップを東京で企画することになったのも、ある日友人のFacebookを読んでいてピピっときてコメント。するとなんかの回線がつながってしまったようで、あっという間にまさよさんにお会いすることに。不思議なんです~。
そこで、発酵と言えば東京のおしゃれ女子の発酵塾、オルガナ連載でもおなじみの神楽坂 発酵美人堂、女将の清水紫織さんに繋がなくては!と、田町さんをお呼びした「ミキ」ワークショップを開催することに。
まさよさんの意向で、受講料の一部はつくった場所の土地神様に奉納、できたらできあがったミキもお供えくださいとのことで、近所の毘沙門天様に。
本当は湘南方面の友人でどうしても伝えたかった友人がいたのですが、なんと直前でまさかのキャンセル。
すると満席だからとあきらめていたのですが、はいれますか?と東京の水がめを預かる檜原村で代々林業を営み、山神をまもってきたお家のお嫁さんTさんから連絡が・・・。
東京の神様系でやれってことですね~と。
湘南方面はあちらの神様の代理大集合になること間違いなし(笑)エピソードもいろいろ面白いのがミキなんです。
ミキつくりは神事
ミキつくりはまずお米をとぐところから。
つくっている全員が丁寧に研ぐことが大切で、そこで各々がもっている常在菌がまじりあい、まさに多様性を体現しています。
お米をとぐことはそのものが神事であり、一粒一粒が命の元=種。
まずは命を捧げて私たちの糧のなってくれるお米一粒一粒に感謝。
そして拝み研ぎという方法で一粒一粒に感謝の気持ちを込めていきます。お水の入れかたもざぁーっと一気にいれてはだめ。
「お米もいきなり水をどばぁっとはいってきたらびっくりするでしょう?脇から少しずつお米全体がきもちよくなるようにいれていくんです」とまさよさん。
そんなこと考えたこともなかった!
この研ぎ方で今回はおかゆにしますが、普通に炊いても抜群にお米が美味しくなります。
おかゆを炊いたら、さつまいもにある乳酸菌が死なない50度以下まで冷ましながら、右回りにすりこぎでよくまぜていきます。
このポイントは右回り!
右回りはエネルギーが入る回転。左回りはエネルギーが出ていく回転。陽と陰です。
この時期の夏越の祓(なごしのはらえ)の茅の輪くぐりも左回りで厄を祓い、右回りでご神気を受け取り、もう一度左回りで穢れを払いますよね。それと同じ。
さつまいもはすりおろしておいて、おかゆが50度以下になったらおかゆにさつまいもを加えてよく混ぜていきます。
ぐーるぐーるとちょっと巫女気分。
最初はもったりと重いのですが、急に混ぜやすく軽くなるのでそこまではしっかりと右回りで混ぜていきます。
ここで保存する容器に移して、その後も時々混ぜながら、人がたくさんあつまる場所に置いておきます。夏だと一晩で、寒い日だと2~3日で発酵完了。
発酵が弱ければお風呂ぐらいのお湯で湯煎すると発酵します。
ほどよい好みの味になったらミキサーにかけて滑らかにして、冷蔵庫に。冷凍保存も可能です。
ミキの日常使い
時々出すとしゅわーっとものすごい発酵力をみせてくれるミキ。
植物性で、砂糖はまったく入っていないので、大豆、乳アレルギーのお子様なども飲むことができます。
そのまま飲むだけでなく、豆乳と合わせて豆乳ヨーグルトにしたり、ヨーグルトのようにフルーツと合わせたり、
スムージーにしたり、塩を足して野菜を漬けたりなど、さまざまに応用可能です。
乳酸菌発酵が強いので、ザワークラウトや糠漬けなどの乳酸菌発酵のブースターにも。
ザワークラウトはどうも成功しないので、ブースターにしてやってみようと思います!
もちろんオリーブオイルに塩コショウ+ミキにお好きな柑橘類の搾り汁をいれて、ドレッシングにもなります。
水キムチにももちろん最適。この水キムチのつけ汁はとても美味しいのでスープや冷麺にかけても美味しいそうです。
お酒好きの方は焼酎や日本酒をミキで割ってのむと、これまた美味!
美味しいだけではなく、産後の母乳育児中のママにもぴったりで、病中病後のお子さんやご高齢の方の滋養にもぴったりだそうです。
なんとワンちゃんのフードやお肉にミキをトッピングすると、食欲が落ちたワンちゃんにも絶大な効果があるとか。
(うちのワンコは食欲不振はありえないので、お腹の調子の悪いときに飲ませています)
鹿児島地方でもっと甘くした缶飲料のミキがありますが、たぶんこの手作りミキは全く別物。
甘いのはちょっとなぁ・・・という方はぜひ、日本全国でミキのワークショップが拡大中なのでいってみてください。
神楽坂発酵美人堂でも今後、定期的に行われる予定だそうです。
神様の御用人田町まさよさんのワークショップも定期的におこなわれているので、ぜひチェックしてみてくださいね。