今年の秋は「日本のジビエ」を楽しもう!
今年の秋は「日本のジビエ」を楽しもう!
国土の7割近くが森林と言われる日本。狩猟採集の時代はもちろん、農耕が始まったあとにも、日本人は獣肉や木の実、山菜など、森からの恵みを受けて生きてきました。
確かに仏教の布教とともに肉食は禁じられるようになりましたが、山間部ではシカやイノシシの他、キジやうさぎ、たぬきや熊も貴重なタンパク源として食べられていました。さらに幕府により獣肉食が禁止された江戸時代にあっても、イノシシは「山くじら」や「ぼたん」、シカは「もみじ」というように名前を変え、食肉文化は受け継がれてきたわけです。
歌川廣重「江戸名所 東両国豊田屋」とL.クレポン複写(写真の複写絵)「山くじら」
といっても、多くの庶民にとっては大の贅沢。年に数回あるかないかの御馳走だったのには違いありません。明治時代になって西洋文化の流入とともに牛や豚などの家畜肉が消費されるようになっても、日本人のジビエは「特別な日常食」として引き継がれていきました。
- 「日本のジビエの復活」で、森も私も美しく!
日本のジビエが急速に消費されなくなったのは、第二次世界大戦後と言われています。食の欧米化が進み、家畜肉が大量生産されて消費量が急激に増えました。流通技術の進歩で山間部でも都会と変わらぬ食べ物が手に入るようになり、処理に技術が必要とされ、時間と手間のかかるジビエは高級品になり、日常食ではなくなっていったのです。
大量生産の肉の登場で、日本のジビエは壊滅状態に…
それは、自然と猟師が少なくなることであり、ニホンオオカミが絶滅した日本では、シカやイノシシの急増による「獣害」が急増。森は荒らされ、農作物にも大きな被害が生じています。
一方、畜産肉の問題はオルガナ読者ならご存知の通り。工業型畜産では、多くの動物は運動不足。さらにワクチンやホルモン、抗生剤などの投与が頻繁に行われ、遺伝子組み換え作物の飼料の問題も未解決。そもそも肉100gを生産するのにその16倍の1600gの穀物を必要とし、輸入肉ならフードマイレージもかかります。
それなら、普段は「畜産肉」をセーブし、野山を駆け巡って成長した「山肉」を特別な時にいただく。そんな選択もあってもいいのではないでしょうか。その結果、日本のシカやイノシシを適正数に保ち、森や山を守り、農作物被害を減らし、そして過疎部である地域の復興財源にもなる。もちろん、食べ物としても「山肉」は高タンパク低カロリーでヘルシー。山のエネルギーを蓄えた山肉をいただければ、元気も出そうですよね☆
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- おいしく安全にジビエをいただくために
栄養豊富で環境にもよい「山肉」ですが、自分で猟をしたり、さばいて食べたりするのは、なかなか難しいもの。必ず、正しく衛生管理され、高い技術が認められた認定施設で処理したものをいただくようにしましょう。また、病気などのリスク回避のため、ジビエの生肉を食べることは禁じられているので注意しましょう。
- ジビエがおいしくいただけるレストランリスト
認定施設から上手に処理されたお肉を取り寄せてもいい(実際、ほとんど普通のお肉のように扱えます)のですが、ジビエ初心者はレストランでいただくのがよいでしょう。日本のジビエがおいしくいただけるレストランをいくつかご紹介します。
◆「オーベルジュ・エスポワール」
http://www.auberge-espoir.com/
フランス料理 長野県茅野市蓼科
オーナーシェフ藤木徳彦さんのこだわりが行き届く名店。春は山菜、夏は高原野菜、秋はキノコ、そして冬は山肉!と1年を通じて地場のジビエが楽しめます。
◆「ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ(旧トロワ・ピエロ)」
http://dubuppa.com/
ジビエ料理 東京祐天寺
シカやキジなどの他、ジビエの王様といわれる「ヒグマ」までそろっています。シェフ自ら作るというジビエの生ハムやサラミなども美味。
◆「炉とマタギ」
http://www.spice-works.co.jp/shop_p/02.html
炉端焼き 東京都(新宿・八丁堀・青物横丁・三軒茶屋)大阪西梅田
「初心者向けのジビエ」をテーマにしているだけあって、仕事帰りなどにも寄れる気軽さが人気。(写真の生肉は馬刺。ジビエの生肉は提供していません)
◆ジビエ料理アンザイ
http://gibier-anzai.com/
ジビエ料理 東京都目白
民家を改造したお店で、予約は1日4名以上1組のみ。猟師のオーナーがしとめたイノシシ(認定施設で精肉処理)を使った「ぼたん鍋」がメイン。野趣あふれるコースがいただけます。
◆鳥取県では県を上げて「ジビエ」を推奨!
鳥取県内でジビエ料理が食べられるお店/とっとり暮らし
http://www.pref.tottori.lg.jp/240270.htm
他にも、長野県、岡山県、和歌山県、静岡県などでは、自治体も一体となって、ジビエを推奨しているとか。おいしくヘルシー、そして森を守って地域おこしにも貢献。旅行のついでに訪ねてみてはいかがでしょうか。
オルガナ編集部