【古代食をいただく旅】御饌を捧げて祈り、古(いにしえ)の馳走に舌つづみ~駒ケ根
八百万の神が集うという日本。
中でも「食べ物」の大切さを祀って建てられた神社は数多く、長野県駒ヶ根市にある大御食神社もその1つ。日本武尊(やまとたけるのみこと)が東国平定の帰路に滞在した際に、この地の長である赤須彦(あかすひこ)が仮宮を建ててもてなしたことを機に創建されたという歴史ある神社です。
大御食神社(長野県駒ヶ根市) 本殿
「日本武尊」青木 繁 画
この杉の根元で日本武尊がもてなしを受けたという言い伝えが残る。現在は3代目。
その際に尊から与えられたのが「御食津彦(みけつひこ)」の名。つまり、神様の食事(御食/御饌)を担当するものとして尊を祀り、食べ物への感謝を捧げる神社として、今に伝説が受け継がれてきました。
その詳細は、阿比留草文字と呼ばれる神代文字で書かれた社伝記に残され、長らく解明されてきませんでした。しかし、明治期に研究者達によって解読。様々なことがわかってきました。
その中には、赤須彦がもてなした料理の詳細が記載されており、当時の長野県駒ケ根近辺で獲れたと考えられる食材を、記述をもとに並べると次のようなものがあげられます。
その山海の幸の豊かさ、バリエーションには驚愕!まさに「御馳走」とはこのこと!
●野の物
里芋・豆・葱・栗
●熊鰐(くま:動物、わに:魚を指す)
熊・猪・鹿・ウサギ・雉・山鳥・雀・つぐみ
鮭・岩魚・やまめ・鮎・沢蟹・鮭の腹子・たにし
●山の物
あけび・茸・山菜・みつば・山ごぼう・蕗・蓬
●果物
柿・山葡萄・栗・かやの実・くるみ・なつめ酒
●白酒(しろき:にごり酒)
また、ここに蜂蜜や蘇(チーズ)、酪(ヨーグルト)・醍醐(バター)・粟餅なども呈されたとか。こうした豊かな食材を煮たり焼いたりして調理し、各自が酢や醤(醤油の原型)、塩などで調味して食べていたといいます。
左から蘇(チーズ)、酪(ヨーグルト)・醍醐(バター)を再現したもの
野趣あふれる食材はバランスもよく、自然のエネルギーを取り込むには最適。
発酵食品もふんだんに取り入れられ、まさに健康食です。
こうした日本武尊が食べたかもしれない「古代の御馳走」を再現しようと、駒ヶ根市では有志による「新古代食メニュー」を研究開発中とのこと。その一部を試食させていただきました。
左より「柿としめじのごまあえ」「揚げ大根」「石垣里芋」
基本的に味付けは薄め。素材の味を活かしたものがほとんどです。
「鯉のあらい 信州酢みそで」古代の人は川魚をよく食べました
「鰐熊(わにくま)ちらし寿司」ローストビーフとサーモンで今風に再現
現代風にアレンジされ、とてもおいしくいただけますが、「もう少し古代食の色合いを濃くした方が?」という声もあり、いろいろ調整しているとのこと。2016年1月より本格的に提供を始めます。
大御食神社に詣ってからいただくか、いただいてから詣るか・・・。
興味のある方はぜひ、古事記の世界と古代食のコラボレーションを愉しんでみてはいかがでしょうか。
味鍔亭 (みつばてい)
0265-82-5966
http://www.greenplaza1984.com/mitsubatei.html
※古代食は事前予約が必要です
オルガナ編集部