2019.8.6 火曜日

能登 塩と発酵の旅 その二

能登 塩と発酵の旅 二日目は発酵と自然栽培を巡る旅です。

一本杉通りの醤油と酒

まずは金沢からは特急で一時間程かかる七尾駅から5分ほど、老舗の店がならぶ不思議な古い街並みが残る一本杉通りへ。
古い建物をそのまま使いながら、でも若い人に代が変わっていたり、伝統を引き継ぐ若者がいたりと、日本の伝統を守る人々の存在にほっとします。

古くて新しいセンスを感じる暖簾がとても素敵な鳥居醤油店。
明治41年に建設された土蔵作りの建物は国登録有形文化財にも指定されています。


古き良きものを現代風にディスプレイされた新しくて古い素敵な店構えが素敵です。
こちらの濃口醤油には北陸らしく三温糖がはいり、富山の濃厚な旨味のある魚をひきたてる醤油になっています。

能登で作られた大豆と小麦、塩にこだわり、明治時代からの古い建物で昔ながらの道具を大切に使いながら丁寧に醤油をつくっている鳥居さん。蔵付き酵母の甘い香りが濃厚に薫ります。
大豆を洗うところから、センスのよいシンプルなラベル張りまでを人の手でやることにこだわるのは、人の手にはふしぎな力があると思うから。そんな丁寧な手仕事がとても素敵です。

鳥居醤油店 toriishouyu.shop-pro.jp/

 


次は創業明治九年の布施酒造店。

このあたりは昔置き屋が沢山あり、各置き屋の紋章のはいった提灯がありました。
立派な漆の箱いり。なんとも贅沢。
「近所の酒蔵から毎晩酒を取り寄せ、客にふるまうことが当たり前だったあの頃が一番いい時代だったね」とご亭主がおっしゃっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蔵の中には米麹の室床部屋、新酒をしぼる昔ながらの機械、酒作りの道具などが雑然と置かれ、冬の酒造りの時期を待ちわびているよう。
夏の時期は酒蔵もやはり夏休みです。
お店から酒蔵までの間にはリアルアンティークな小物や本が並び、タイムスリップしているような、時間がここだけ止まっているかのような不思議な雰囲気があります。
こちらの酒造では大古酒、三年・五年・七年ものの古酒とあらばしりとにごり酒の2種の新酒があります。
もちろん試飲も可能。古酒は濃厚なお味、あらばしりはキリっと夏にぴったりなお味でした。

布施酒造店 http://www.hokurikumeihin.com/fuse/

しかしやはりこちらも後継者問題、高齢化過疎という問題を抱えていました。
フランスなどのワインのシャトーは国がきちんとお金をだし、ワインという発酵産業を国特有の文化として保護しています。
「日本もこういった酒蔵を国が文化財として保護していかなくてはだめです。」と白澤先生がおっしゃっていました。
本当にこのまま民間の1商店として年数がたてば、10年後にはなくなってしまうかもしれない。そんな危機感を強く感じました。

日本ではじめて自然栽培給食を実現した羽咋へ

羽咋市といえば、日本ではじめて全公立学校の学校給食を自然栽培(有機JASではなく自然栽培)に全面切り替えを成し遂げたことで有名ところ。


そこに住む日蓮宗妙法寺の高野誠鮮氏は、実はその立役者で、農水省のアドバイザーも務める方。高野氏は「ローマ法王に米をたべさせた男」として有名で、かつては深夜の人気番組「11PM」のディレクターとして矢追さんとUFOブームをつくった人でもあります。

 

高野氏は自然栽培と有機農法の大きな違いは腐るものと枯れるものの違いと語ります。もちろん枯れるのが自然界の中で一番正しいあたりまえの姿で、有機農法の野菜にのこる硝酸体窒素の問題を非常に問題視されています。パートナーがガンで亡くなり、自分も気を付けなくてはと有機野菜に変えたとたん、残っている硝酸体窒素で同じくガンで亡くなってしまった著名な方の奥様のお話をされていました。硝酸体窒素は2500以下でなくてはならないのですが、日本では表示義務さえありません。(福島屋さんだけは昔から表示しています。)
真に日本を救うのは「自然栽培」のみと。自然栽培はTPPにも強いそうです。
実は東京パラリンピックの選手の食事は「自然栽培」に決定したそう。オリンピックの方は各国の選手たちは母国から食料をもってくるのだそう。日本の農薬基準は世界3位にはいるくらい緩いですから。カラダのコンディションに細心の注意を払うトップアスリートにとって食の質へのこだわりはあたりまえ。今や世界のデフォルトはオーガニックなので日本の立ち遅れ方はひどいとおっしゃっていました。
日本の真のオーガニックの立役者ともいうべき高野氏。貴重な話をお聞きしました。

 

氷見の自然栽培ファーム ナイスファーム

その後は自然栽培ファームとしても有名なナイスファームさんへ。
こちらは以前ORGANAでも取材させていただいたところ。

過去記事:大人気!北陸は氷見 廣(ヒロ)さんのナイスファーム!素人女性が駆けつけ自然栽培を学ぶ、その秘密は?

代表社員 廣 和仁さんは10年前に木村秋則氏の提唱する「自然栽培」に魅了され、脱サラし農家になった方。
その後、石川県羽咋市にて「木村秋則自然栽培実践塾」の塾生となり木村秋則氏より自然栽培を学び、平成29年2月合同会社NICE FARMを設立し、 氷見市にビーガン料理のお店cafe&restaurant「たねのわ」オープン。
たねのわではビーガン料理を頂き、ナイスファームさんのお野菜を買うこともできます。

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイスファームは日本の棚田景勝地に選ばれるほど美しい、遠くに日本海を望む広大な棚田が広がるエリアにあります。
棚田を降りていくと畑があり、固定種を中心に様々な品目を栽培されています。ただ固定種だけでは農業法人として食べてはいけないので、現在では安定収穫のためにF1種も植えているそう。固定種はこの激しい気候変動などにやはり弱いのです。農業の理想と現実です。「固定種は自家菜園をやってらっしゃる方が積極的に守っていってほしい」自然栽培農家を事業として行う方の本音です。
彼は休耕地の雑草の生え方でその土地の状態(酸性かアルカリ性か)などもわかるとおっしゃっていました。
あくまでも自然の本来の姿が正しい姿という木村流の自然栽培畑は、自然栽培なのに美しく、意外にも虫が少ない。
虫はどれも腐っているところを回収に、わるいところを食べにくる益虫。みみずも同様。よく虫やみみずが多い畑はいいというがそれはまったくの誤解とおっしゃっていました。

人間に欠くことができない塩から発酵食、自然栽培まで、私たちの食を彩る様々な原点をめぐる旅。
あらためて現場の方々のお話を聞くことで、その大事さを実感しました。

金沢で美味しい寿司三昧、美味しいスイーツ巡りも素敵ですが、少し時間に余裕をもって、
こんな食の原点をたどるディープな旅はいかがでしょうか?