世界の「発酵」が面白い!
『天然発酵の世界』—サンダー・キャッツー
今、アメリカの食カルチャーにじわじわと影響を与えている発酵マイスターのサンダー・E・キャッツさんをご存知ですか。
フードライターとして、世界における発酵食品の歴史や作り方、その効能や健康における重要性などをまとめた著書「ワイルド・ファーメンテーション」が話題となり、アメリカの食文化に古くも新しい“発酵”という波を起こしました。
残念ながら、この本の和訳はアマゾンなどを検索しても見つからなかったのですが、どうやらタイトルと表紙を変えて翻訳書として日本に紹介されているようす。それが、今回ご紹介する「発酵食品の世界」です。
味噌や漬物、ヨーグルト、チーズ、甘酒、サワークラウトといった、日本でもなじみ深い発酵食品に加え、インドネシアの大豆発酵食品「テンペ」やエチオピア式のハニーワイン「タッジ」、レバノンの発酵食品「キシュク」、メキシコのパイナップル酢「ビニャグレ・デ・ピーニャ」など珍しい食べ物もいろいろ紹介されています。
発酵前と発酵後の「テンペ」
掲載されている発酵食品のレシピは、いずれもシンプルで感覚的、はっきりいって“大雑把”な感じです。そんなご自身の発酵レシピについて、キャッツさんは著書の中で「化学実験」と言い切り、だからこそ「自分の味覚と経験を頼りにして楽しみ、その結果としておいしい発酵食品が楽しめる」と語っています。人間が自然のもと育んできた本来の発酵食品とは、まさにそういうものなのでしょう。
つ、詰め過ぎ!?
アメリカ中を飛び回ってワークショップや講演を行っていますが、どこも大盛況とのこと。朝から夕方までみっちり1日中、時には2〜3日かけて、キャッツさんのトークが続き、サワークラウトなどの発酵食品を実際に作って食べます。
こんなポスターも
実はキャッツさん、ニューヨーク育ちの都会っ子。それがHIVウイルスに感染したことをきっかけに、食と健康に目覚め、テネシー州の小高い森の中で野菜を育てる生活をスタートしたといいます。その際に、摂れすぎたキャベツの保存のためにサワークラウトを思いつき、それ以降、発酵食品の魅力に取りつかれたのだそう。
そんなキャッツさんの発酵生活の起点となったサワークラウトを、自己流にアレンジしながら作ってみました。材料はたまたまうちにあったキャベツと人参、セロリ、にんにく。ザクザクと刻んで、キャベツ1玉に対して塩を大さじ1程度。最初は嵩があるものの、しっかりもみ込んでいくと、少しずつ水が出てきます。
あとは、容器にぎゅーっっと押し込み、出てきた水も捨てずに一緒に入れてしまいます。このとき必ず野菜に水が浸かっているのがポイント。空気に触れると変色したり、カビが生えたりするのだとか。あとはゆるめにふたをして、できあがり!
キャッツさんのワークショップで作られているサワークラウトは色とりどりでおいしそう!キャラウェイシードやクミンなどスパイスを入れてもおいしく仕上がりそうです。まさに「自己流アレンジ」こそ、発酵食品の醍醐味ですね。
所要時間はわずか10分程度。野菜についている乳酸菌をそのまま利用するから、ほとんど失敗もなく、風味豊かなサワークラウトができます。発酵食品スターターはまずは、ここからはじめてみませんか。
Webサイトも充実しています。英語の得意な方はぜひ!http://www.wildfermentation.com/
オルガナ編集部